静電気帯電防止靴 JIS T8103
2010年(平成22年)5月25日に改定になった静電気帯電防止靴 JIS T8103規格についてその適用範囲、種類及び記号、用語及び定義を抜粋で記載しました。
静電気帯電防止靴 JIS T8103について
静電気帯電防止靴 JIS T8103規格
適用範囲
この規格(静電気帯電防止靴 JIS T8103)は、作業者及び履物の静電気帯電が原因となって発生する災害及び障害を防止する目的で使用する静電気拡散性(静電靴)及び静電気導電性靴(導電靴)について規定する。
この規格で静電靴及び導電靴を使用する場所とは、次の場所である。
a)爆発又は火災の危険がある場所
1)爆発危険区域
2)爆発高危険区域
b)生産障害(電子デバイスなどの破損など)のおそれのある場所
1)静電気放電保護区域 2)その他生産障害発生区域(ほこり又は汚れの付着などによる生産障害が発生する区域)
導電靴は交流100V以下の低電圧路でも感電事故の危険性があるので、その使用に当たっては、感電のおそれがないと判断される条件下での作業に限定して使用するように、注意しなければならない。
種類及び記号
帯電防止性能による区分
区 分 | 種 別 | 記 号 |
---|---|---|
静電靴 | 一般 | ED |
特殊 | EDX | |
導電靴 | − | EC |
防護性能による区分
区 分 | 防護性能 | 記 号 |
---|---|---|
安全靴 | 先しんが装着されており、甲被及び表底の材料が JIS T 8101(安全靴の基準)を満足するもの | P |
保護靴 | 先しんが装着されており、甲被及び表底の材料が
JIS T 8103(静電気帯電防止靴)の一定(*1)の材料及び材料性能を満足するもの | O |
作業靴 | 先しんが装着されておらず、甲被及び表底の材料がJIS T 8103(静電気帯電防止靴)の一定(*1)の材料及び材料性能を満足するもの | W |
(*1 詳細は割愛しました) |
甲被による区分
区 分 | 甲 被 |
---|---|
安全靴 | 革 |
耐油性ゴム | |
非耐油性ゴム | |
保護靴及び作業靴 | 革 |
ゴム | |
プラスチック | |
ビニールレザー | |
人工皮革 | |
布又は合成樹脂引布 |
環境区分ごとの相対湿度を規定
環境区分 | 記号 | 測定 |
---|---|---|
1 | C1 | 相対湿度:12±3% |
2 | C2 | 相対湿度:25±3% |
3 | C3 | 相対湿度:50±3% |
帯電防止性能
静電靴などの帯電防止性能はJISの定める(詳細は割愛します)試験を行ったとき、靴1個当たりの電気抵抗が次の表に適合しなければならない。また、帯電防止性能は、測定値では15秒値と1分値を満たし、かつすべての試料の測定値が規格値を満たさなければならない。
区分 | 種別 | 電気抵抗値R | |
---|---|---|---|
測定温度23±2℃ | 測定温度0(+2-0)℃ | ||
静電靴 | 一般 | 1.0×105 ≦ R ≦ 1.0×108 Ω | 1.0×105 ≦ R ≦ 1.0×109 Ω |
特殊 | 1.0×105 ≦ R ≦ 1.0×107 Ω | 1.0×105 ≦ R ≦ 1.0×108 Ω | |
導電靴 | − | R < 1.0×105 Ω | R < 1.0×105 Ω |
注記があるがここでは割愛しました。 |
その他の性能
種 類 | 性 能 |
---|---|
静電安全靴 導電安全靴 | JIS T8101の性能に適合する事。 |
静電保護靴 導電保護靴 | 衝撃性能及び圧迫性能はJIS T8101の性能に適合する事。 甲皮が革製及び人工皮革製の場合、JIS T8101によって試験したとき、はく離抵抗は250N以上である事。 総ゴム製及びプラスチック製の場合、JIS T8101によって試験したとき、 気泡が連続して出ない事。 |
静電作業靴 導電作業靴 | 甲皮が革製及び人工皮革製の場合、JIS T8101によって試験したとき、はく離抵抗は250N以上である事。 総ゴム製及びプラスチック製の場合、JIS T8101によって試験したとき、 気泡が連続して出ない事。 |
用語及び定義
1) 静電安全靴(electrostatic dissipative protective footwear)
- 甲被及表底の使用材料がJIS T8101の規定に該当し、静電気拡散性をもち、かつ、靴のつま先部に先芯が装着されることによって、圧迫及び衝撃に対して、着用者を保護する性能を有する靴。
2) 静電保護靴(electrostatic dissipative occupational footwear)
- 静電気拡散性をもち、かつ靴のつま先部に先芯が装着されていて、圧迫及び衝撃に対して着用者を防護する性能をもっているが、甲被及表底の使用材料の一部または全部がJIS T8101の規定に該当しない靴。
3)静電作業靴(electrostatic dissipative working footwear)
- 静電気拡散性をもち、かつ靴のつま先部に先芯が装着されていていない靴。
4) 導電安全靴(electrostatic conductive protective footwear)
- 甲被及表底の使用材料がJIS T8101の規定に該当し、静電気導電性をもち、かつ、靴のつま先部に先芯が装着されることによって、圧迫及び衝撃に対して、着用者を保護する性能を有する靴。
5) 導電保護靴(electrostatic conductive occupational footwear)
- 静電気導電性をもち、かつ靴のつま先部に先芯が装着されていて、圧迫及び衝撃に対して着用者を防護する性能をもっているが、甲被及表底の使用材料の一部または全部がJIS T8101の規定に該当しない靴。
6)導電作業靴(electrostatic conductive working footwear)
- 静電気導電性をもち、かつ靴のつま先部に先芯が装着されていていない靴。
このページはJIS 規格 T8103静電気帯電防止靴より抜粋しております。無断掲載、転記を禁じます。
3代目尾藤の解釈
JIS T8103は2010年5月25日付けで改定されています。改定の理由はいろいろあるかと思いますが、私なりに理解していることを述べさせていただきます。
もともとJIS T8103は静電気対策のうち防爆性に重きをおいていた規格であったと思います。それが、最近の電子デバイスの静電気破壊防止用途としての需要が伸びてきていることもあり、電子産業分野での規格に改めようという流れだと理解しております。ただし、従来からの規格である防爆用途にも適用させることも重要視されているかと思います。
国際規格であるIEC規格との整合性を図ることにも注力されているようです。改定前のJIS T8103ではたとえば甲被に人工皮革を使用し、つま先部分にJIS T8101安全靴に規定する先芯を使用した場合でもいずれの静電靴にも該当しないという問題が生じていました。そこでIEC規格の試験方法(JIS C 61340-4-3)を採り入れ、有機溶剤使用作業場、粉じん作業場などでの静電気帯電防止靴仕様の観点から従来不明確であった爆発・火災の危険度に応じた区分に対応する静電靴の種類を明確にし、日本国内で使用される静電気帯電防止靴の作業環境をほぼ網羅することを目的として改正を実施したようです。
なお、この尾藤の私見はJIS T8103規格静電気帯電防止靴解説の内容と(財)日本電子部品信頼性センター(RCJ)主催のESD COORDINATOR資格更新セミナー(2012年10月29日開催)の講義内容、テキスト、その他参考文献を元に私なりの解釈をしたものです。
事実と異なるなどご意見がある場合はご教授いただければ幸いです。
静電靴の抵抗値の下限がある理由
また、静電靴の規格で抵抗値に下限がある理由について2015年5月20日開催の(財)日本電子部品信頼性センター(RCJ)主催のESD COORDINATOR資格更新セミナーで丁寧にご説明いただきましたのでここに記載いたします。
これは日本と欧米で電力の接地システムの仕組みが違う。IEC規格では抵抗の値に下限がないが、日本では下限を生じないと、接地システムの違いから感電の危険が生じてしまいます。そのため、日本では静電靴の規格に抵抗値の下限を設定する必要が生じております。 これは、(財)日本電子部品信頼性センター(RCJ)主催のESD COORDINATOR資格更新セミナー(2015年5月20日開催)の講義内容、テキスト、その他参考文献を元に私なりの解釈をしたものです。
事実と異なるなどご意見がある場合はご教授いただければ幸いです。